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対話シリーズNo.8 正義と環境

更新日:2022年8月24日




クリスチャンは、自分は天国に行くので世界はどうなってもいいと思っているのですよね。


この言葉は、つい10日ほど前、私自身が直接聞いたものです。


米国福音派

 私が親しくしているヨーロッパの方々は、米国の福音派(プロテスタントの一部)に関して「環境破壊、貧富の差、人種差別、中東の不安定さや、核兵器などを許容してきただけでなく、積極的に押し進めている」と考えています。「キリスト教は、地球と人類にとって有害な宗教だと私は思います」と言う人さえおられました。私はクリスチャンとして申し訳なく、本当に胸を痛めています。


もちろん私は、科学の発達や奴隷解放、教育、医療、人権に加え、芸術分野でも、社会や文化の発展の背後にはキリスト教的思想と主のお働きがあったと考えています。キリスト教が2000年の間に人類に貢献したことは計り知れません。しかしながら、過去に大きな過ちを犯してきただけでなく、現代の人々がそう語る米国福音派の現実があるのも事実だと考えています。


つい最近、米国最高裁が温室効果ガス排出量削減の動きを制限する判断をしましたが、それは、トランプ氏が指名した保守系判事が化石燃料関連企業側の主張を支持したからでした。そのトランプ氏は、福音派の多数が支持母体となって当選したことはよく知られています。


私自身、福音派の中で信仰生活を送ってきました。福音派にも色々な流れがあるのですが、日本で福音派と言えば、多くは米国系です。敗戦後、マッカーサーの呼びかけに応じて数多くの宣教師が米国から来たからです。


ハイパー・プラトン主義?

 西方教会は全般的に、新プラトン主義の影響を受けているのですが、アウグスティヌスもカルヴァンも世界が消滅するとまでは決して言いませんでした。ところが私は、パレルコマイという一つのギリシア語の一つの訳語に基づいて世界は消滅すると教えられてきました。いつどこで、この教えが生まれ、米国福音派の中で支配的になったのかは私にはわかりません。ただそのために、伝道して人の魂を天国に送ることが唯一永遠の価値があるのだと私は思っていました。その結果、私は社会の様々な問題への関心を失っていきました。


米国のキリスト教は、独特の建国の歴史があり、また、国益と一体となった市民宗教だと考えられています。しかし、それだけが原因ではなく、それと同時に、米国福音派の判断や行動の背後には、世界は消滅するというハイパー・プラトン主義とも言える思想があるからではないだろうか、と思い巡らしているところです。無関心は容認に、容認は推進につながるからです。


帰路に立つこの時期に選挙を迎える日本の私たちはどうでしょうか。社会に対する無関心は、不義不正や環境破壊を見過ごすことにつながります。そして、ついには目先の国威・国益を求める大きな力に巻き込まれていくのではないかと、私自身のことを考えても、心配になります。


神は

 神は、ご自身が愛情を注いで造られた良い世界を回復する、しかも、御子イエス・キリストにより、キリスト者を通して回復する、と聖書は語ります。そこを貫いているのは被造世界に対する神の愛です。この視点に立つクリス・ライトという福音派の著名なリーダーは、教会の第一の使命は社会正義と環境保護だと語っていますが、それはうなずけます。


詩篇記者は、将来現れるメシアが全地の王となって治めるときの様子をこう描きました。


王は弱い者や貧しい者をあわれみ

貧しい者たちのいのちを救います。

虐げと暴虐から

王は彼らのいのちを贖います。

王の目には彼らの血は尊いのです。(詩篇72:13-14)


(次回は最終回)



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