旧約聖書において「死」はどのように記されているでしょうか。
人は死ぬと土に帰る
旧約聖書の基本は、神に逆らったために「人は死ぬと土に帰る」ということです。創世記3章19節にこうあります。
あなたは、顔に汗を流して糧を得、ついにはその大地に帰る。
あなたはそこから取られたのだから。
あなたは土のちりだから、土のちりに帰るのだ。(創3:19)
これは、罪を犯したためにアダムが死ぬことになる、と神に宣告される場面で語られたものです。人は死ぬと「土に帰る」と記され、この表現が他に6回あります(ヨブ34:15、詩90:3、104:29、146:4、伝3:20、12:7)。旧約聖書の主張は、第一に、死というのは神に背いた結果である、第二に、死とは、プラトンが言うように「霊魂が肉体と分離して天に行くこと」ではなく、人という全存在が土のちりに帰る、というものです。
他の表現
旧約聖書では、死ぬことは、別の表現でも言い表されています。
「眠る」など(66件)
それは、「先祖とともに眠る」などで、新改訳2017を日本語で検索すると、合計で66件あります。
その中で一番多いのは、「先祖とともに眠りにつく」の38件です。例えば、第一列王記2章10節にこうあります。
こうして、ダビデは先祖とともに眠りにつき、ダビデの町に葬られた。
次は、「民に加えられる」が11件、「先祖たちとともに葬られる」が5件、「先祖たちのもとに集められる」が3件、「先祖のもとに行く」が2件、「先祖の墓に入る」が1件、「長寿を全うして墓に入る」が一件などとなっています。
よみに下る(16件)
地下で死者が眠る世界は、「よみ」とも呼ばれています。ですから、死ぬことは「よみに下る」とも表現されています。これは16件あります。
例えば、ヤコブは創世紀37章でこう言いました。
「私は嘆き悲しみながら、わが子のところに、よみに下って行きたい。」こうして父はヨセフのために泣いた。(創37:35)
まとめ
以上のことをまとめます。旧約聖書によれば、人は死ぬと「土に帰る」、あるいは、「墓に葬られる」、「地下で眠る」、その地下の世界である「よみにくだる」、などと表現されていることが分かります。古代のイスラエルでは、「よみ」という言葉を使いましたが、同時代のオリエントの他の宗教のように、「よみ」について思いを巡らし、その世界の詳細を創作したりしませんでした。彼らにとって「よみ」は「墓」と同じでした。そして、そこに行ったならば、そこから帰ってくることはありません。死んだら土に帰って終わるのです。旧約聖書を通して読むと、これは単純で明快な教えであり、聖書が語らなくても明白な体験的な事実でもあります。
写真はキュロス王の墓 By Bernd81 - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=63225153
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