(夏の我が家の収穫)
妻と私が福音に生きようとする時、大切なこととして考えてきている「食」の問題をお分ちしたいと思います。
キリスト教の救いが、創造本来の姿を回復することであり、世界を愛情深く正しく治め始めることだとすると、クリスチャンは、正義や環境、そして平和を意識していきます。そのすべてに関わり、かつ、大変身近な問題として「食」があります。
食とグローバル資本主義
「より安く、より多くのものを、より早く、世界中から集めて消費する」というグローバル資本主義。それが、世界の貧富の差を拡大し、環境危機をもたらしていると批判され、それに代わる在り方が模索されています。
そのグローバル資本主義の現実の一端は、私たちの日々の食卓を見るとよくわかります。マーマレードは、柑橘類の育たない外国で瓶詰めされた安いもの。紅茶は、お茶の育たないイギリス製。蜂蜜は安いウクライナ産。パンの小麦も、野菜も肉も、安い外国産。そして、当然のように、2020年におけるカロリーベースの日本の食料自給率はわずか37%です(農林水産省)。私たちの食べているものの6割以上が外国のものなのですね。
外国産は本当に安い?
マーマレードは、原産国からヨーロッパに運ばれて加工され、ヨーロッパから日本に、日本の港から回り回って我が家に運ばれます。日本で荷上げするための港湾整備と国内の道路網のための財源の多くは私たちの税金です。外国製は安いように見えますが、それは、私たちの税金が勘定されていないからです。もちろん、輸送の途中で消費される化石燃料とそのための温室効果ガスの問題があります。
食と平和
意外と知られていないことがあります。グローバル資本主義を支える海上輸送はシーレーンが安全であることが前提となるのですが、そのために、今まではアメリカを中心に、軍備のための膨大な出費を重ねてきました。パクス・アメリカーナとも呼ばれる、アメリカがもたらした平和です。しかし、それは、今後確実に変化すると言われています。アメリカはもうそれほどお金がかけられないので、それぞれの国が軍備を増強して自分のシーレーンを守れと言われているからです。グローバル資本主義は、軍備とも直結しています。米軍基地のために払ってきた日本の負担は、もちろん、安いマーマレード代には含まれていません!!
もし、日本の食のためのシーレーンが危うくなったら、過去にそうしたように、将来日本は軍を派遣することになるでしょう。食と戦争、食と平和は、実は深い関わりがあるのです。食とエネルギーを海外に依存する危うさは、今回のウクライナ戦争でも明らかになりましたね。
コーヒーとお肉
コーヒーにしろ、チョコレートにしろ、原産国では、子供たちが過酷な状況で、低賃金で働かされているケースがあります。それだけではありません。原産国の人々は、単一作物の生産が求められて、貧富の差が生じ、飢えが広がっています。幸い少しずつ、昔のような普通の多品目栽培がいくつかの第三国では回復しているようですが。
また、私たち先進国の人々が食べる肉を生産するために、世界の森林が早い速度で破壊されています。また、先進国の牛や豚の餌として、第三国の穀物が買い漁られて価格が高騰し、現地の貧しい人々の間に飢えが広がるという現象も生じています。しかも、牛や豚の排出する温室効果ガスも膨大だと言われています。
遺伝子操作作物の問題
世界のメジャーな小麦、とうもろこしの生産地では、除草剤散布に強い遺伝子操作作物が使われています。また、農家が種を利用できないように、第二世代が死んでしまうような操作がされている種もあります。この遺伝子操作の危険性はまだ十分に研究されていません。
質
質の面もあります。「食卓の向こう側 コミック編〈1〉」(西日本新聞社、2007)という本は、バランスの崩れた食のありかたで、豊かなはずの日本国内で、体と心が蝕まれている現状を指摘しています。多くの農薬が投入された野菜は、実際に有機野菜と比べて栄養が低いというレポートがあります。
最後に
私たちは、「より安く、より多くのものを、より早く、世界中から集めて消費する」ことを求めて今に至りました。しかし、そのために払った代償はあまりにも大きかったと言えるでしょう。世界を、正義と美しい自然と平和で満たすように、と主に期待されているクリスチャンとして、この時代、どのように考え、生活すべきでしょうか。
すぐ実行できる一つの解決法があります。それは、肉の消費を減らして、少し高くても、地元産のもの、有機栽培のもの、フェアトレードのものへと、一品目でもいいので、少しずつ切り替えていくことです。究極の地元産は、自作です。自宅でミニトマトを作るも楽しいですよ。アパートのベランダでも、日が当たるならば居間でも十分に育ちます。
多数の消費者がほんの少し「食」を変えるだけで、大きな影響を日本に、そして世界に与えることができると思います。本来は広告に踊らされない消費者が一番力があるはずなのですから。
グローバルからローカルへ。安さから真の豊かさへ。早さからゆとりへ。物の多さからシンプルライフへ。大きいものから小さいものへ。
それを食だけでなく、エネルギー、その他の面も含めて楽しく目指したいですね。それは決して簡単ではありませんが、その動きはすでに世界各地で始まっています。そして、日本の50万人のクリスチャンが励まし合って本格的に始めたらどうだろう、と夢見ています。
最後に参考となる番組をご紹介します。食に関するNHKスペシャルの以下の番組は二百円+税で見ることができます。
日々の食卓と軍備が繋がっている!途方もない現実社会の中、クリスチャンとしてどう生きてゆけば良いのか?
出来ることは細やかなことからで良いこと、確認出来ました。
年齢問わず、多くの方に読んでいただきたいと思いました。